会社法上、キャッシュ・フロー計算書の作成は義務付けられているわけではないので、個人農家だけでなく農事組合法人であってもキャッシュ・フロー計算書を作らなくても法律的には問題ありません(例外はありうる)。
しかし、会社の経営実態の正確な把握、取引先や金融機関などの関係者からの信頼度UPのためには、作っておくととてもやくに立つものなので、オススメしたいものです。お小遣い帳や、金銭出納帳をつけておいたら自分のお金の流れがわかるというのに近いイメージです。

キャッシュ・フロー計算書を、法定要件に従って詳細に作成しようと思えば、公認会計士のようなプロや経理の人で作成を担当したことのある人でなければ難しいですし、そういう人たちでも骨が折れます

そういうことなので、実務では、以下の簡便的な手法を採ることが多いです。
当期の損益に減価償却費(他にも非資金項目があればそれらも加味)を足して営業CF(キャッシュ・フロー)を算出し、それに投資CF(キャッシュ・フロー)を加減することによって、借入金の返済財源がいくらくらいありそうか、他に投資ができそうかなどを見積ります。

農業の場合は、大きな再投資はそれほど大きくないと思われるため、将来キャッシュ・フローを見積もるうえでは必要最低限の投資額を毎年考慮する必要はないのですが、一方で、修繕が定期的に見込まれるのであれば将来キャッシュ・フローを見積もるにあたって考慮しておく必要があります。

実務上は、過去2年or3年の実績をベースにして将来キャッシュ・フローを見積もることが多いのですが、農業の特殊性故に2年or3年にこだわり過ぎない姿勢が求められます。
なぜならば、農業の場合は、台風や豪雨などの自然災害、天候不順など環境変化の影響を受けやすいからです。加えて、畜産の場合や、果樹園を経営する場合などは、そもそものビジネスのサイクルが1年よりも長いことが普通だから必要に応じて長期トレンドに基づいて将来キャッシュ・フローを見積もった方が実態に近い見積りが可能となるという具合です。

最後に、注意事項もお伝えしたいのですが、交付金収入をキャッシュ・イン・フローとして見積りに加える場合には慎重に検討しなければなりません!
要件を満たせているかだけでなく、政策や制度の動向も十分に踏まえておかなければ絵に描いた餅に終わってしまうことも起こり得ます。願望に基づいて実現可能性が低い事象を計上してしまうと、会計における保守主義の原則に反するだけでなく、実際に後から自分が困ってしまいます。
しっかり検討するようにしましょう!