キャッシュ・フロー計算書も、今まで確認してきたB/SやP/Lなどと同様に農業特有の論点が出てきます

そもそも、キャッシュ・フロー計算書とは何ぞや?という方のためにご説明させていただきますと、
一定期間におけるキャッシュ・インとキャッシュ・アウトを捉え、キャッシュの流れを計算して表示する財務諸表のことです。
農業に限った話ではないですが、資金繰りの管理や、経営計画策定などに必要になってきます。また、借入金の返済財源の把握という点でも意味があります。
特に、農業はお金を回収できる時期が偏っている(毎月同額の給料をもらえるサラリーマンなどとは全く違いますよね!)ので、キャッシュの状況を把握しておくことはより重要だと言えるでしょう!

農業の場合は、これまでも見てきたとおり、有形固定資産に含まれる「生物」の育成・売却を伴います。そのため、それによって生ずるキャッシュ・フローをキャッシュ・フロー計算書上、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に計上することが必要となるというところが農業の場合の特徴的なところになります。
一般的な会計の場合には、有形固定資産を売却した場合は、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に計上しますが、農業の場合は「営業活動によるキャッシュ・フロー」に計上することになります。
間違えないように注意してください

このような特殊な処理になる理由は、農業の場合は「育成仮勘定」を介した「生物」の計上が、植物の栽培または動物の育成という農業生産活動そのもののだからです。また、「生物」の売却は、通常の営業目的に基づき反復継続して行われるということも理由となり、より適切な実態を反映するのは「営業活動」として区分することの方なのです。
P/Lでも「生物売却収入」が売上高に含まれているので、そのこととも整合性のある取り扱いだといえますよね

なお、キャッシュ・フロー計算書について間接法を選択するのであれば非資金損益項目の調整が必要になりますが、農業の場合は、この項目が多かったり、農業独自のものが出てきたりします
他の業種でも出てくる「減価償却費」や「固定資産圧縮損」は同様に出てきますが、「生物売却原価」、「農業経営基盤強化準備金繰入額」、「育成費振替高」などは調整が必要な非資金項目になります。
「育成費振替高」に関しては、マイナスの非資金費用項目ですので、支出として要調整になります。

注意しておきたいのは、「生物」と「育成仮勘定」以外の有形固定資産を取得したり売却したりした場合は、一般的な業種の場合と同じように「投資活動によるキャッシュ・フロー」区分に計上するこということです。農業の「生物」と「育成仮勘定」の取得・売却が特殊なだけなので注意してください